ぎゅっとして
そのときだった。


突然後ろからぷっと吹き出す声がして、驚いて振り向くとそこには慧が立っていた。


クックッと喉を鳴らすように笑う啓。


慧が笑ってるところなんて見たのは初めてで。


あたしは思わず、その笑顔に見惚れていた。


「それ、そんなに欲しいの?」


慧がちょっと首を傾げ、バッグの方を見て言った。


「え?あ、う、うん、まあ・・・・・」


「・・・・・・どいて」


そう言って慧は、ポケットのお財布から小銭を出すと、ゲーム機の挿入口に入れ、ゲームのボタンを押した・・・・・。


すると、びっくりするほど簡単に、あたしの欲しかったエナメルバッグが持ち上がり、景品取り出し口へ繋がる穴にぽとりと落ちたのだった。
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