ぎゅっとして
「そりゃそうだよね。でも、それならお金出さなきゃ」


そう言ってお財布から小銭を出そうとしたあたしの手を、すっと止める。


ほんの少し触れた指先。


男の人なのに繊細できれいな指に、思わずどきりとする。


「いいよ、別に。見てて楽しかったし。あんた、おもしろいよね。見てて飽きない」


そう言ってにっこり微笑んだ慧。


その笑顔が、真っ直ぐにあたしの心に入り込んできた。


何がおもしろいんだか、見てて飽きないんだか、その意味はわからなかったけど・・・・・。


でも、とにかくこの日から、あたしの心には慧が住み着いてしまったんだ・・・・・。

 
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