地球最後の24時間
「お前、いま俺の顔見たな」

「……」

「おい、待てっつってんだろがコラ!」

 その声に煽られるように多くの殺意が背中に突き刺さり、今しがた見た血まみれの高校生の姿が脳裏をよぎる。

 一瞬震えをきたした足が恐怖を振り切るように地面を蹴った。逃げるが勝ちだ。

「殺せえー!」

 後ろから浴びせられる声に呼応するように、暴徒らの駆け出す音が住宅街に響いた。捕まれば確実に待っているのは惨たらしい死だ。

 疲れと痛みでもつれそうな足はそれでも必死にブーツを前に進める。背後から足音が近付いて来ているような気がして、いつ襟首を掴まれるのかと気が気ではない。自分の意志に反して走れない足がもどかしい。
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