地球最後の24時間
 その時、横を走る少女の姿が消えた。

 いや、正確には転んで視界から消えたのだ。

 俺の頭に計算が働く。少女を追いかけてきた連中だけでなく、俺を追いかけてきた連中も女を見れば目的を変えるだろう。俺にとって軽薄な女など嫌悪の対象でしかないのだ。

(逃げられる!)

 目の前が一瞬明るくなった気がした。

(このまま逃げろ!)

 心が叫ぶ。しかし意志に反して足は動きを止めていた。

(逃げろ! 何してる!)

 白昼夢でも見ているような希薄な現実感の中、俺の手が伸びて小さな手を掴む。そして少女の体を引き上げるのが見えた。

(馬鹿か俺は!)

 少女の手を握り締め、再び逃走劇が始まった。暴徒らはすぐ後ろに迫り、いつ捕まってもおかしくない。
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