地球最後の24時間
(名前くらい聞いときゃ良かったな)

 今の男とももう会えないのだと思うと少しだけ淋しさが募る。強面でも気の良さそうな男だったが……。

(……って、ええっ?)

 そんな俺の心を見透かしたかのように前方にバイクが止まっていた。さっきの男が大きく手を振っているのが見える。その解せない行動を訝しみながらバイクの速度を落とした。

(なるほどな……)

 その意味はすぐに分かった。道が寸断され、そこには小さなクレーターが出来ていたのだ。

「見てろよ」

 バイクを停めずに男に言った。

 一旦中央分離帯よりにバイクを寄せるとクレーター沿いにスピードを乗せる。そしてルーレットに放り込まれる玉のように道の左端から落差三メートル程のすり鉢状の穴に車体を躍らせた。

 エンジンが一際高い音を吐き出したあと、着地したリアタイヤが土を蹴り上げた。
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