地球最後の24時間
(こうするんだよ!)

 そのまま時計回りに上縁に沿い、円を描くように斜面を駆けると遠心力を利用して反対側に続く路上へと駆け上がった。

 ざっとこんなもんだ。こんな時オフロードバイクを選んだ自分を褒めたくなる。

 得意げに反対側に立つ男を煽ると、奴も同じようにクレーターへジャンプした。ビッグパワーと舗装路専用タイヤのせいで姿勢がまとまらない。

 四苦八苦しながらスピードを乗せようともがく姿に不安がよぎった。

 一気呵成とはいかなかったが、這い上がるようにして斜面を登ってきた。ちょっと不格好な登場の仕方に思わず笑いがこぼれる。男も苦笑いしながら安堵の表情を見せた。

 その時……軽い金属音が聞こえたかと思うと突然エンジンが空回りした。

 登り切っていないリアタイヤが後退を始める。慌ててブレーキをかける男に駆け寄って車体を支えた。

「なによ!?」

「チェーンが外れたんだろ。引っ張るからブレーキを離せ。イチ、ニイ、サン!」

 1000ccを超えるビッグバイクだ。その重量は200キロ前後もある。引き上げようと踏ん張る足が震え、体のふしぶしが悲鳴をあげた。

 夕暮れに二人の男の野太い声が響き渡ると、ずいっ、と落ちかけたリアタイヤがアスファルトに乗った。
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