地球最後の24時間
「危なかった……助かったよ」

「貸し借りなしだな」

 そう言って俺はニヤリと笑った。残された時間は少ないが、このまま去るのはあまりに心苦しく思える。

「三分で直してやるから手伝えよ」

 俺は車載工具を取り出して修理を始めた。

「あんた手際良いなあ」

 リアシャフトを事も無げにスライドさせてチェーンを掛ける俺の手を見てそう言った。

「もとバイク屋だからな。ところであんた名前は? 俺は水島真樹夫」

「俺は浅野藤吉。みんなには『あさきち』って呼ばれんよ」

「あさきち……って」

(似合ってる)

 思わず笑いそうになった。

「俺は福岡まで行くんだけど、あんたは?」

「行くあてはないのよ。言うなら死に場所を探してるようなもんよ」 

 そう言うと顔に似合わない少ししんみりとした顔を見せた。

< 139 / 278 >

この作品をシェア

pagetop