地球最後の24時間
「天涯孤独でね、彼女もいないし好きな女もいない。どうして良いか分かんねえのよ」 

 俺は手を休めず話を聞いていた。

「バイクしかねえしよ、俺には。死ぬときは走りながら死ぬかな……てな感じ?」 

 最後のボルトを締めるとバイクは生き返った。立ち上がりながら言葉をかける。

「それも良いかもな。俺みたいに離婚した女に会いに行くよりはカッコイイんじゃねえか?」

「なんだよあんた、そっちのほうが全然良いじゃんよ」

「そうか?」

「そうだよ」

 納得したようなしてないような表情は二人とも同じだ。この『あさきち』とは、どこか通じるものを感じる。

再びバイクを走らせた。今度は追い抜かれることはなかった。二台併走する形でそろそろ本州を脱出する地点に差し掛かる。

 しかしまたしても平穏な時間は、長くは続かなかった。
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