地球最後の24時間
 右手に黒々と立ちはだかる水の壁。

 津波と言うにはあまりにも巨大な波が目前に押し迫ってきていた。

「何してる! 早く行け!」

 奴のバイクならばこの難関を乗り切れるだろう。しかしこのバイクのスピードでは
到底かわせるものではない。

「言ったっしょ! 死に場所を探してるって」

 いきなりケツを蹴飛ばされたような加速に襲われた。

 振り返るとあさきちが左手を俺のバイクのリアキャリアにかけ、アクセルを全開に開け放っている。

 時速三百キロを叩き出すモンスターバイクのパワーは、俺のバイクの小さなスピードメーターを軽々と振り切らせてしまった。

「おおおおっ!」

 奴の左手の負担は想像を超えるものだろう。丸太のような太い腕が恐るべき力を発揮する。

「馬鹿、お前も死ぬぞ!」

「死んでからぬかせ!」
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