地球最後の24時間
 追いついたワンボックスがその巨体を容赦なくぶつけてくる。

 バイクの後尾が前に弾かれながらも、アクセルを開け、真横を向いたまま進む方向へハンドルを切り、フルカウンターの姿勢を保つ。そしてそのまま橋を渡りきると、路上へ飛び込んだ。

 後方で激しい金属音と爆発が立て続けに起こり、熱風が背中を押した。獰猛な追跡者もあの弾幕を浴びてはひとたまりもなかった。

 バランスを立て直して僅かに残った人垣をすり抜けると前方に視界が開けた。橋を渡り終えてすぐの交差点を右折し、かつて自分が住んでいたマンションを目指す。

(もうすぐだ!)

 橋の上で昇り立つ炎と黒煙を背に、かって知ったる道を突き進んだ。

 亜紀と二人で通ったレンタルビデオ店を通り過ぎ、二人で散歩した公園の横を抜ける。甦る思い出に彩られてゆく景色に胸が痛いほど締め付けられる。。

(次の交差点を左に曲がれば……)

 その直後、信号機も灯っていない暗い交差点が明るいライトに照らし出された。目を疑った。

 それはバイクのライトの光量では決してない。
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