地球最後の24時間
(馬鹿な!)

 後ろを振り返る俺の目に轟然と一台のワンボックスが迫っていた。生き残りがいたのだ。その執拗な狂気に寒気が走った。

 下手に減速して曲がれば後ろから突っ込まれるのは必至だ。

 恐怖を飲み込みながらギリギリのブレーキングでその交差点に車体を放り込んだ。

 路面に倒れこむような深いバンキング。グリップ力の限界を要求されたフロントタイヤは細かいピッチで路面を叩き、リアタイヤは大きくスライドした。

(曲がれよお!)

 そのままコンクリートの壁に突っ込んでいくような感覚に陥る。血液を吸い取られるような恐怖が体を襲った。

 しかしギュッとリアタイヤが路面を掴む感触がシートから伝わると、弾けるようにバイクは交差点の先へ続く道へと車体を躍らせた。

(よおっしっ!)

 安堵した直後、激しいタイヤのスリップ音が背後から響き、そしてバックミラー越しにコンクリートの壁に突っ込むワンボックスの姿を認めた。

 ワンボックスのフロントガラスは砕け、その助手席側からは人が上半身をだらりと外にぶら下げている。しかし運転手はまだ生きているようだった。

 首を二、三度横に振ると再びセルを回した。

 しかし、エンジンは掛からない。その様子を眺めながらバイクを降り、ワンボックスに近付いた。
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