地球最後の24時間
「おい」

 割れた助手席の窓越しに拳銃を突き付ける俺の声を聞くと、ピクリと体を硬直させた。

 男は短い頭を金髪に染め、金のチェーンを首にぶら下げたあまりガラの良さそうにない男だった。俺はそいつに尋ねた。

「なんで殺そうとする」

 男に悪びれる様子はなかった。

「なに言ってんだコラ! こっちゃ嫁も子供も殺されたんだぞ。誰でもいい、殺しまくって死んでやらあ!」

 憐れみを感じるべきだったろうか? しかし……

(だったら殺される悲しみも分かるだろうが)

 憎しみを連鎖させることしか考えていない。こいつは息の続く限り追ってくるつもりなのだろう。

 俺の心を見透かしたように、男の声が不気味に絞り出された。

「早く殺せよ……でないと……」
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