地球最後の24時間
「名前は何て言うんだ?」

 マスコットのようにちょこんと座る少女に問いかけた。

「侑海」

「うみちゃんか、可愛い名前だ。それじゃしっかり掴まってるんだぞ」

 振り落とさないように、加減速に気を遣って走らなければならない状況に、無意識に時計の針に目を移す回数が増えた。

(こっちは親も見捨てて来てるって言うのに……)

 走り出してたいして時間が経っているわけでもないのに、早くも後悔の念が湧いてくる。

(かと言って今更なあ……)

 じりじりと心の葛藤に身悶えながら、それでも結局はどうにもならないと分かってはいた。

 やがて道は下りに差し掛かり、曲がりくねった先に赤い炎がちらりと見えた。山肌に隠れてすぐに見えなくなったが、またカーブを曲がると見えてくる。おそらく、あそこから少女は逃げて来たのだろう。小さな村落のようだ。

 俺はその村落を目前にバイクを停めた。

 どういう事態が起こっているかはおよそ想像がつく。侑海の両親が生きていることはないだろう。あさきちに相談した。
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