地球最後の24時間
 そうか、あさきちは狂った自衛隊員には鉢合わせてこなかったのだろう。確かに全隊狂っているとは限らない。

「とりあえず入り口まで行って様子見りゃ良いっしょ」

 あさきちは不安を募らせる俺を無視して先へとバイクを走らせた。

 そこは川沿いの小さな村落だった。道の両脇の家々は激しく燃え盛り、入り口に居るだけでも熱風が顔を焼く。その先へ続く道は赤く照らされていて、通り抜ける事さえ躊躇われた。

 その紅蓮の炎の脇から幾人かの男たちが飛び出して来た。それを追うように銃声が轟くと一人、また一人と地面に崩れ落ちてゆく。

 その銃声の先からそいつは現れた。

 炎を背にして輪郭しか掴めないが、獲物を一匹も逃すまいとする猟犬のように猛然と走りながら、空になった弾倉を取り替えている。

 その動作には無駄が無く、今まで見てきた自衛隊員とは明らかに一線を画して見える。

 再び銃口から閃光がまばたき、その凶弾を男らに撃ち込んだ。そして分散して逃げる男には反対の手で構えた拳銃を撃ち放った。
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