地球最後の24時間
「あきらめが人間を捨てるきっかけになるのよ。あきらめたら理性のタガが外れんだって」

 コイツは馬鹿なのか、それとも崇高な思考回路を持っているのか、俺には掴めない。

「最期まであきらめずに自分の道を貫くことが出来たら、たぶんその人生は幸せなものになるっしょ」

「もうすぐ死ぬんだぞ、その幸せな人生も意味がなくなる」

「いま生きている意味を見失うな!」

 恫喝に似たあさきちの言葉が俺を貫いた。

「……意味?」

「そう、あんたにも俺にも生きてる意味がある。あんたは亜紀さんを幸せにする意味、俺は……」

 そこまで言うと首を傾げた。

「たぶん、その時わかるんだと思うんだけど……温泉かなあ?」

 そう言うとケラケラと笑った。コイツの言う死に場所とは恐らく生きた意味を見いだせる場所を指すのだろう。それは俺について来て見つけられるものなのだろうか?
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