地球最後の24時間
 溢れるほどの幸せな思い出が胸を満たし、その画面の上に一粒、涙のしずくを落として桜を滲ませた。

「亜紀……待ってろ……」

 涙の粒はその数を増し、俺は携帯を閉じた。

 亜紀はあの場所で待っているのだ。二人だけの幸せが詰まったあの場所で。

「真樹夫君……亜紀は」

「わかりました。居場所が」

「じゃあすぐに行ってくれ、頼む!」

「でも、お義母さんは……」

「俺が捜すから心配いらねって」

 あさきちの言葉が突然割って入る。

「……でもお前は」

「実はよ、ガソリンも残ってないしさ」

 照れたように笑う姿がそこにはあった。

「じゃあ後ろに……」

「なあ、俺は捨てられて育ってきてな、これまでずっと孤独だったんよ。誰との繋がりもないままこのまま死ぬつもりでよ。でも一方で俺の生きていた意味を探してたんだ」

 あさきちは笑顔を作っていたが、声は震えてその感情を隠しきれてはいなかった。

「あんたが必死に亜紀さんを想う姿が羨ましくて、放っとけなくてさ。ここまで来ちゃったけどもう終わりだ……俺は見つけたんだ生きる意味を」
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