地球最後の24時間
 バランスを崩した機体に限界能力を要求するパイロットは声を限りに叫び、俺は一心に祈った。

 鳴り止まない警告音と点滅する赤いランプが、機体にメカニカルトラブルが起こっていることを告げている。

 窓の外を包み込む真っ赤な炎が舌なめずりをして、俺たちを待ち構えているように見えた。

 副パイロットが次々と機能を失ってゆくヘリの状態を告げ、スイッチとレバーを間断なく操作する姿が見える。

「こらえろよ、コラア!」

 操縦桿とスロットレバーに力を込めて暴れる機体を制御するパイロット。その技術が卓越していたのか、俺の祈りが通じたのかはわからない。

 ふと乱れていた重力が落ち着きを取り戻し、と同時に窓から差し込む赤い光が身を潜めた。

 その窓から見えるのは地上一面に広がりゆく火の海。そして俺は助かったのだ。

(昨日今日と何回目の奇跡だ……?)

 いまだ心臓の鼓動が早鐘を打つ胸を押さえて生きていることを確認した。気付くと後部座席に侑海がシートベルトにがんじがらめにされて泣きわめいていた。

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