地球最後の24時間
 それでも戦闘は続いている。暴動部隊からロケット砲が矢継ぎ早に放たれると、あたりは劫火と熱風に包まれた。応戦していた銃声が途切れ、それは撃ち合っていた鎮圧部隊の全滅を意味した。

 俺は片足を引きずったまま立ち上がり、後ろポケットの拳銃を引き抜いた。

 奴らの前では豆鉄砲にすらならないのはわかっている。しかし猛烈な怒りのはけ口は、そこにしか見いだせなかった。

 左前方に居並ぶ暴動部隊に狙いを定める。俺はこれを放てばすぐに殺されるだろう。しかし躊躇はなかった。

 その瞬間、狙っていた部隊が突如として発光し、激しい爆発が起こった。

 爆風によって吹き飛ばされる俺の体の上から、上空を駆け抜けるジェット音が降り注いだ。

 燃え立つ炎が織り成す音以外、静寂に満たされた路上。

 俺は地面に転がったまま天を仰いだ。絶え間ない怒りと悲しみと痛みでもう立ち上がる気力もない。左足は役に立たない。左腕も力を失った。このまま俺も朽ちてゆくのだろうか?

 そのとき不意にあのバイク屋の老人の言葉が頭に浮かんだ。

『お前は今なにをするんだ!』

 ぴくりと右腕が動いた。

『あんたが幸せにならねえとみんな死んでも死にきれねえんだって』

 あさきちの言葉が俺を後押しする。

『絶対生きて会ってあげなきゃ』

 ひろみはあの時そう言った。
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