地球最後の24時間
 玄関で最後の別れを告げた。

 悲しくて悲しくて涙がとまらない。心から愛していたのに、幸せにしたいとこれほど願っていたのに、それでも別れなければならない不条理がやるせなかった。

 そしてそれは亜紀も同じ想いだったのか、頬を伝う涙がとめどなく流れては顎から落ちた。

「マキ、いつかあなたがわたしの言ったことを分かってくれるようになったら……」

 そう言いかけた亜紀は言葉を呑んだ。

「ううん……あなたは他の女の人と幸せになって」

「いや、俺は亜紀としか幸せになる気はないし、なれないよ」

 もう人生の終わりのような気がしていた。何もかもが終わってしまったのだ。

「ねえ、最後にもう一度キスして。あなたに愛されたことを胸に刻んでいたいの」

 その言葉はやけに悲しく胸に響いた。

 俺たちは最後に抱き合って長い別れのキスを交わした。もう二度と交わされることはない悲しいキスを……。
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