地球最後の24時間
 懐かしくて愛おしくてずっと聞きたかった声が耳を優しく撫でる。すでに思い出となっていた甘い香りが鼻をくすぐり、鮮やかに思い出を甦らせた。

「亜……紀……?」

「うん……」 

 残る力を振り絞って細い体を抱きしめる。その手から伝わる温かさは昔となんら変わりはない。

「亜紀!」 

 やっと……やっと会えた……。

 どれほどこの時を待ち望んだだろう、恋い焦がれて胸をかきむしる幾夜を過ごしただろうか?

 五年間、片時も忘れることはなかった。ずっと愛していた。その想いが声となり涙となって一気に胸を衝き上げる。

 それは慟哭へと変わり、亜紀の胸を濡らした。

(もうだめかと……)
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