地球最後の24時間
 亜紀は俺以上に声をあらわに泣いている。震わす体を併せて何度も俺の名前を呼んだ。

(……何度あきらめかけたか)

「ずっと会いたかった……ずっと待ってたよ……マキ」

 俺はもう胸が一杯で声を出すことすら出来なかった。ただ亜紀の言葉に頷いて答え、そしていつまでも抱き合っていた。

「毎朝起きるとね、マキはどんな朝を迎えたかなって思ってた」

(俺だって毎日思ってたよ)

「夜寝るときはね、おやすみマキって……いつも思ってた」

(俺だって……毎晩!)

「五年間……ずっと、ずっと……マキ……あなたしか居なかったの、私の心には」

 涙に濡れる頬に一枚の花びらが舞い降り、俺は上を見上げる。そこには満開の花をつけた桜が二人を見守っていた。

 俺はようやく、失くしていたもう半分の心を取り戻したのだ。
< 269 / 278 >

この作品をシェア

pagetop