地球最後の24時間
 残された時間は少なかった。

 俺は自分の母親から託されたおにぎりを亜紀に差し出した。そのおにぎりは海苔と梅干で二人の顔を形作っていた。

「おい、これって俺? こんなに不細工じゃないだろ」

「ううん、そっくり。やだ、あたしの顔ゆがんでるよ、マキがちゃんと持ってこないから……でも、嬉しい。お義母さんの心が」

 ぐちゃぐちゃに潰れてしまっていたが、亜紀はその想いを受け止め、それを一口頬張った。

 もっと早く分かり合えていたら……と、亜紀は涙をこぼした。でも、それでもよかったと思う。最後にわかり合えたのだから。

 失血で震えの止まらない俺に亜紀がコーヒーを淹れてくれた。二人の最高の贅沢、そして幸せ。それはあのなつかしいクジラのマグカップに注がれていた。

「クジラのカップ、直したの」
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