地球最後の24時間
 その無重力状態から一気に落下運動が始まった。

 胃がせりあがるような感覚に全身の毛穴が開く。高さは三メートルは浮いているだろうか、下手に落ちれば希望は途絶えてしまうだろう。本能は握ったステアリングを何とか水平に保ち、タイヤから落下させる行動を選択していた。

(耐えられる!)

 歯を食いしばるその刹那、激しい衝撃が突き上げるように腕を伝い、耐え切れずに胸をタンクに打ち付けさせた。それでも生きるという意思がバイクを手放させない。本能的に少し右に傾いた車体を堪えようと、揺れる地面に足を突き立てた。

 しかし安堵するのはまだ早かったようだ。バイクのステアリングを握る手が突然引きはがされた。今度は大気の衝撃波――殴りつけるように飛んできた爆風は車に跳ねられたのかと錯覚を起こす程だ。

 こらえる暇もなく体は再び宙に放り出された。

(こんなところで……)

 きりもみで吹き飛ばされる景色のなか、天地は逆転して上下の感覚はなくなった。今の自分を支える強力な意志で目を見開く。

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