地球最後の24時間
 ようやく坂の頂上にたどり着くと、予想通りその先は下り坂になっていた。

(きっつ……)

 おまけに喉も渇いて仕方がない。喉の渇きをまぎらすために、ポケットからラッキーストライクを取り出し、ジッポを探す。

(ん?)

 黒こげとなった自衛隊員の無残な姿を思い出す。

(そっか……)

 ずっと使っていたライターだったのに。それにバイクも失ってしまって、残ったのはボロボロになったシルバーのヘルメットだけだ。

(なんもかんも、失すだけの人生だったな)

 下り坂が手伝って少しずつ歩速は早くなる。

(だけどさ……)

 再び両足は地を離れ、駆け足が戻ってきた。

(取り戻せることもあるはずだ)

 軽い息苦しさが心地良い。ランナーズハイってやつだろうか。そのうち右下に一般道が併走しているのが見えた。

 ワイヤーロープを乗り越え斜面を下ると、コンクリートの壁を飛び降りて田舎道に出た。
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