Office Love 〜社長と私〜
暫く見ているとその女はこっちの視線に気付いたのか、ふと俺の方を見た。
「・・・?お客様でしょうか?」
今の俺の身なりと態度で客と判断した女。
客か・・・まぁ半分当たりだな。
俺は、この会社の人間でもなければ侵入者でもない。
かと言って、客かどうかと聞かれれば微妙な所だが。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
「あぁ・・・、ここの社長に資料を渡しに来た。」
弁解するのも面倒だから、俺は客とすることにした。
「社長にですか?かしこまりました。ご案内いたしましょうか?」
そう言って、社長室まで案内しようとしている。
「場所は知っているからいい。」
そう女に言えば、はい。と笑顔を返してきた。
「お前、さっき怒られてたな。上司に。」
「え?あ・・・はい。」
見られていて、気まずいのか少し顔を濁らせた。
「落ち込んだりしないのか?」
「多少は、落ち込みますけど私がいけませんので・・・。」
そう言って困ったように笑う女。
「そうか・・・。じゃ、俺は行く。しっかりそれ片付けろよ。」
「あ、はい!」
その時の笑顔に、俺は少し驚いた。
さっきから思っていた。
こっぴどく怒られた後にすぐに笑顔になれるのはそう簡単な事じゃない。
愛想笑いならともかく、ここまでの笑顔は・・・。