占いの館へようこそ
前田の好きな女性は木下 香という。

前田の会社に入社してきた事務員で、歳は前田と同じ20歳だという。


「誕生日や血液型は知らない」


ムスッとした表情で吐き捨てるように呟くと、ガタガタと右足を揺らしはじめた。


「では、生年月日等は結構です。
香さんはどのような性格の女性ですか?」


香の事を尋ねた途端、前田の目の色が変わった。

それまでのふてぶてしい、不満に満ちた色が消え、待ってましたとばかりに生き生きしだした。


「これが香たんの写真で、これが香たん愛用の化粧品、これが…」


足元に置かれていた紙袋からガサガサと大量の品を次々にテーブルに並べ、自慢げに話を始めた。

写真、化粧品、マグカップ、ポーチ、ピアス、シャンプー、使用済の紙コップ、輪ゴム、クリップ、割り箸や空のペットボトル等が小さなテーブルを占拠した。
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