空の少女と海の少年
「全く……髪なんてどうでもいいでしょう。」
「よくない!……はっ!もしかしてうちが恋に落ちないようにわざと……!?」
「違います。」
「安心して優っ!!うちは優一筋だから!転入生なんてたかが知れてるに決まってるし!優の愛はうちにバッチリ届いてるから〜っ!!」
「違います。とりあえず黙って下さい。」
読み途中の分厚い本を閉じて
深い深い溜め息をついた
黒髪眼鏡のイケメン──須藤優
優が黙れと言ったから
ニヤニヤしながら黙る奈央
気持ちわるーい
なんて双子の声は聴こえない
気持ちわるーい
気持ちわるーい
どんなに言われても聴こえない
気持ちわるーい
気持ちわるーい
聴こえな「こんのクソガキ共っ!!」
聴こえてました
再び始まった鬼ごっこに
優は今までより大きな溜め息をついた
どんなに教室が煩くても
教室の隅で静かに窓の外を
ひたすら眺めていた美少女は
ふと視線をドアの方に向けた
腰まである白銀のサラサラの髪に
整った顔立ちの美少女──橋本由紀
由紀の一言で教室は
恐ろしい程静かになった
「来るよ。¨噂の転入生¨」
_