空の少女と海の少年


広場から放射状に広がる道のうち
一本の道を進んでいく職員に
奈々と海斗も付いていく


それまで道で談笑していた生徒達は
4人を見つけると好奇の目を向ける

それも当然だろう
ここの生徒達も職員もそれぞれ
決められた制服を見にまとっている

それに対して4人は
地元の進学校の制服姿なのだから
外からきた人間だという事はすぐに分かる

そして、理由はもうひとつ


ーーなあ!あの子可愛くね?

ーーほんとだ!なんか小さくって小動物みたいだよな~

ーーねえねえ!あの人イケメンじゃない!

ーーモデルとか?オシャレだし!!


耳に入る会話はどれも不愉快だった

陸のことはどうでもいいが
春のこととなるとこの2人は
とても機嫌が悪くなるのだ


「私の可愛い可愛い可愛い春に汚らわしい目を向けるなんて死ねばいいのに」

「つーか死ね。死なないなら殺す」


春の可愛さに癒されていた生徒達は
その後ろを鬼の形相で歩く美男美女に
睨みつけられ、悲鳴を上げて散っていく


そんな事をしながら歩いていると
職員はひとつの建物の前で足を止めた

4人が見上げた建物は
他と同じように白く、大きい
まるでマンションのようだ


「ここがあなた達の暮らす寮よ。部屋は15階にふた部屋取ってあるから自由に使ってちょうだい。今日は始めての転移で疲れてるでしょう?学園の案内は明日改めてしますから今日はこのまま休んでください。では、私はこれで失礼するわね」

「あの!待って下さい!私達はここに住むわけにはいきません!」

「…能力者は学園で過ごし一人前の能力者になる。それは能力者として生まれたものの義務であって、あなた達に拒否権はありません」

「それでも、私達は…!」


ぐらり、と視界の端で何かが揺れた

それが何なのか分かった奈々は
言葉を止めて振り向いた

そこにいたのは
足元が震える春とそれを支える海斗


「ここは能力者の為の場所。そうでない彼女にはここにいるだけで負担が大きいのでしょう。建物の中なら外よりは影響を受けない筈です。あなた達の話、私から学園長に伝えておきますから…今日は休ませてあげなさい」


職員の言葉に奈々は拳を握り
弱々しい声で、はい、と返事をした




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