空の少女と海の少年
ーー冷蔵庫の中の食材はどれも新鮮そうで
奈々は卵とハムを取り出す
手際よくそれを調理し
カゴに入った食パンをトーストする
ハムエッグの香ばしい匂いが
リビングいっぱいに広がる頃には
付け合わせのサラダとポトフは
すでに取り分け終えていた
匂いにつられたのか
ドアが開く音とともに
まだパジャマ姿の春が
リビングに顔を出した
「おはよー!って、すごーい!美味しそう!!」
「おはよう春。もう出来るから座ってていいわよ」
うん!ありがとう!
そういいながら料理を食卓に運ぶ春に
奈々は笑ってありがとうと言うと
焼き上がったパンを運ぶ
4人分の料理を運び終えた頃
ガチャリと、ドアの開く音がして
学園のではない制服に身を包んだ
海斗と陸がリビングに入ってきた
「おはよう」
「おはよーう!今日も奈々の料理はうまそうだな!さっすが未来の俺の嫁~!」
「おはよう。で、誰が誰の嫁ですって?」
「にゃなふぁふぉれのふぉれ!(奈々が俺の嫁!)」
口いっぱいにパンを頬張って
親指を立てて言った陸だが
次の瞬間には勢いよく
テーブルに顔をぶつけていた
上げようにも重力の塊が邪魔をする
「ふぐっ!?」
「馬鹿じゃないの、黙ってちょうだい」
「ふぉ~ふぁれなふぁらふぁれっふぁらめふぁよ~(も~食べながら喋っちゃ駄目だよ~」
「お前が言うな」
笑顔でハムエッグを頬張る春に
海斗は冷静に指摘しながら
その頬に付いていた卵を拭い取ってやる
少し前までの日常に戻ったような
そんな錯覚を覚えながら
海斗は指に付いた卵を口に入れた