空の少女と海の少年
ーーそう、錯覚なのだ
時は戻る事無く進み続ける
全員が食べ終わると
海斗と陸で後片付けをし食器を洗う
奈々と春はその間に着替えて
そして4人で学校へ向かう
二年前までは当たり前だった
生活のリズムは体が覚えていた
しかし今日は違う
学校へ行くのではない
学園長に会いにいくのだ
それぞれの想いを胸に秘めて
エレベーターに乗り込んだ
「ーーおはよう。よく眠れたかしら」
エントランスに着くと
そこには昨日の職員の女性がいた
ええ、と短い返事を奈々が返すと
職員は返事の代わりに笑顔を見せ
エントランスに背を向けて歩く
その背中に無言で付いていくと
昨日とは違い、車が用意されていた
「ちょっと遠いからね。これならあなたも大丈夫なはずよ」
「すっ、すいません!ありがとうございます!」
春が大げさに頭を下げると
職員はまたいいのよ、と笑った
車の中に流れるクラシックに
耳を傾けながら流れる景色を見つめる
学園の中でも一番大きな建物が
見えてくると職員が口を開いた
「あれが校舎よ。あの最上階に学園長はいらっしゃっるわ」
4人は校舎を見上げた
寮よりも遥かに大きな建物は
縦にも横にも大きく壮大だった
春はゴクリと喉を鳴らして
車からゆっくりと降りた