空の少女と海の少年


──暗く長い廊下を蓮は走っていた


キィィィ


『蓮、お帰り。』


玉座に座って漫画を読んでいる魔神様は
蓮を見ると微笑んだ

しかし蓮はこれ以上ない程に
不機嫌な表情で魔神様を睨みつける


「何で止めたの。」

『言っただろう。あの戦いに意味は無い。』

「春ちゃんは元に戻っちゃったんだよ……。僕はまたひとりになった。」


魔神様は蓮の元に行くと
頭をポンと叩いた


「いてっ!」

『楠木春は¨空¨だ。もしもリール様が空を殺せと命じたら……お前は殺せるか?』

「………。」

『……今は忙しいがその内に暇ができたら遊んでやる。…空は諦めろ。』


魔神様はそう言って部屋を出て行くと
蓮は崩れるようにその場に座り込んだ


「春ちゃん……。」


そう呟いた蓮の声は微かに震えていた


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