空の少女と海の少年
"新入生の皆さん"
応接用のソファーに案内されて
4人は横に並んで座り
その向かい側に学園長が座った
職員は何時の間にかいなくなっていて
学園長は優雅に微笑んでこちらを見た
「寮には満足してもらえたかしら、何か不自由があったら寮の職員に言ってもらえればいいから…あら?部屋に制服が用意されてる筈だけど、無かったかしら?」
「その事ですが…!」
口を開いた奈々を制したのは
海斗の左手だった
面倒くさがりの海斗は
あまり口を開くことはない
その海斗が口を開いた
「俺達は帰ります。ここには入りません」
「あら?そうなの?」
「そうです。失礼します。行こう、春」
海斗が立ち上がると
奈々と陸も同じ様に立ち上がる
学園長に背を向けて歩く2人も
はじめからそのつもりだったのだろう
海斗は春の手を掴んで
立ち上がらせると
2人の後ろを付いていく
「…ここは能力者の為の施設。外の世界では分からなかったことでも、ここなら簡単に分かることもあるわ」
「ーーっ!」
春は足を止めた
心臓がバクバクと音を立てる
分かるかもしれないのだ
ここなら、春の能力が
能力者なのか無能力者なのか
はっきりすることができる
学園長はその姿に微笑むと
さらに言葉を続けた
「じゃあ、こういうのはどうかしら?今からあなた達には"能力検査"を受けてもらうわ。そこでいい結果が出たら何も問題ないのだから、このままここで過ごしてもらう。悪い結果だったらあなた達は外に帰してあげるわ」
どうする?
海斗は拳に力を入れて
振り返って睨みつける
「ふざけるな!俺達は「受けます」
海斗の言葉を遮ったのは、春
海斗の手を離して一歩前に出ると
もう一度大きな声で言った
「私、受けます」