空の少女と海の少年
◇4人の真実
──バサッ
月のない夜
教会の屋根の上に
降り立ったのは黒い天使だった
腰まである長い髪をなびかせて
赤い瞳で遠くを見つめている
真っ黒なローブに真っ黒な羽
リール
それがこの堕天使の名前
『相変わらず醜い世界ね。』
ネオンで光輝く街を見つめ
右手を前に突き出し握り締めた
『消えてしまえばいい。』
空気に深く浸透するような澄んだ声
右手を下げると
そこにあった筈の街は
広大な砂漠に姿を変えていた
それと同時に何千人もの
人間の命も消え去った
『少しはましになったかしら?』
クスクスと笑うその姿はまさに悪魔
ふとよく知る気配を感じて
リールは振り向いた
『みんな久しぶりね。』
『お待ちしておりました、姫。』
跪いているのは3人の魔神
リールは肩をすくめると笑った
『姫……か、懐かしいわね。闇の牢獄に閉じ込められてから何百年も経ったのに、あなた達は変わってないわね。』
『姫はとても美しくなられました。』
魔神達の言葉に微笑むと
漆黒の羽をバサリと広げた
それを合図に魔神達は
立ち上がると一礼して闇に消えた
『……やっと出れたんだもの、今度こそ世界は私の物になる。』
リールはそう呟くと夜空へ消えていった
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