空の少女と海の少年


三田さんは視線を春と海斗に移す

不安そうに見つめ返す春と
迷いのない瞳を向ける海斗

この子達がそうなのだ


「…3つの能力系統の中でも最強と謳われる"自然系"その頂点に立つ能力と言っても過言ではないのじゃ。歴史上、その能力を持つ者が現れたとされるのはこの世界が生まれて間も無くだったが、それ以来その能力を持つ者は現れなかった為、その存在は伝説とされた…」


まるで昔話をするように
言葉を紡いでいく

その話に耳を傾けながらも
その伝説が自分とどう関係するのか
頭の弱い春にはよく分かっていなかった

しかし、春と違い
理解力に優れた海斗には
三田さんの言いたいことが
なんとなく、分かっていた

だからこそ嫌だった


「楠木春さん、古賀海斗くん。君たちが最強にして全能力の頂点」


空 と 海 の 能 力 者


…ああ、やっぱり

苛立ちを隠すように
前髪をクシャリと握り締めた


「春が…そんな凄い能力者なの…?」

「そう、君は空の能力者じゃ。まだ完全に目覚めてはいないがの…」

「そっか…空…それが春の能力なんだね!ふふふ!ねえ海斗!これで春もみんなとおんなじ能力者だよ!」


窓の向こうに広がる青空のような
澄んだ青い瞳はキラキラと輝いていて
とても嬉しそうに笑うから


「…ああ、よかったな」


そんな笑顔を向けられたら
俺も笑うしかないじゃないか

どこか悲しそうな顔をした海斗に
浮かれる春は気づかない

奈々と陸は顔を見合わせ
小さく溜め息をついた




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