空の少女と海の少年


「ねえねえサンタさん!春はいつ能力が使えるようになるの?今日の夜くらい?あっ、でもそんなすぐに使えないよね…明日の朝くらいかなあ??」

「ふぉっふぉっ、それは無理じゃのう。あと私は三田じゃ」

「じゃあ明後日!」

「ふぉっふぉっふぉっ」


ベッドに腰掛けて
足をブラブラさせる春は
いつかなー、いつかなー、と
楽しそうに話している


「つまらなそうね」

「……お前もな」


壁に寄り掛かりながら
春を無表情で見つめる海斗
横に立つ奈々も同じ様に無表情で

2人の心の中もきっと
同じことを考えているのだろう

普段は全く気が合わないが
こういう時だけはムカつくくらいに
考えることが同じなのだから


「これで外に帰る為の理由もなくなったわね」

「外はどうなってんだろうな」

「ここは"学園"よ。高校にもアパートとも、もう話はついてるわよ。外に帰ったところで帰る家も場所もないわ」

「そうだな」


まるで他人事のように
2人は自分たちの置かれた状況を
淡々と話していた

実感がないのだ
春が能力者だと分かったことも
この学園で暮らすということも

自分たちが守ってきた"日常"が
音を立てて壊れていくことも


「…親バカっつーか、なんつーか」


それも全て、春を大切に思うからであって

そんな2人を横目見ながら
陸は大きく溜め息をついた



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