空の少女と海の少年

◇強くなれ



──魔界の中心にそびえる魔王城

数百年前、当時の魔王が
堕天使リールに殺されたため
魔王城はリールの城となっていた

玉座に座るリールは今
怒りに身を震わせていた
原因はふたつ
大事な人形が壊されたこと
そしてもうひとつは
目の前に跪く一人の魔神


ドールの見たもの・聞いたことは
全てリールの頭の中に
流れ込むようになっていた

ドールが見たのは
空の姫と海の王子
炎神と気神の生まれ変わり
そしてもう一人


『あれはあなたが可愛がってた人間。何故あんな所にいて、ドールを壊したのかしら?』

『申し訳御座いません。しかし奴はもう用無し。我の部下ではありません。』


三魔神の一人レノンは
跪いたまま淡々と話した

リールは無表情で立ち上がり
レノンを蹴り飛ばした


『ガハッ……。』

『そう言えば人間を助けられると思ったの?愚かね。お前の考えは手に取るように分かるわ。』

『……っ!申し訳御座いません!蓮は……どうか蓮だけはお見逃し下さい姫!』

『馬鹿ね……そうだわ。』


面白そうに笑うリールは
目の前で土下座している
レノンに命令を下した


『裏切り者を殺しなさい。』

『そんな……。』

『命令に背くつもり?そしたらお前が死ぬことになるわよ。』

『………。』


レノンはしばらくの沈黙の後
静かに立ち上がると
迷いのない真剣な眼差しで
リールを見つめた


『息子を守れぬ父親などいりませぬ。』


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