空の少女と海の少年
◇駆け抜けろ
──魔界にそびえる魔王城
その地下室にリールはいた
床には血でかかれた魔法陣が
光が全く存在しないこの部屋で
怪しく光を放っていた
『私の可愛い魔物を殺す人間共に……ドールを壊した奴らに私の力を見せつけてやるわ。』
リールは空間から巨大な鎌を引き抜いて
それを軽々と前に突き出すと
鎌の先から赤い雫が一滴
血の魔法陣に触れた
そして魔法陣の光が増し
部屋が赤い光で満たされると
リールは目を瞑った
『まずは手始めよ。永遠の闇を……忌々しい光を消してあげるわ。───。』
リールが何かを唱え
それに呼応するかのように
鈍く輝く魔法陣が回転を始めた
しばらくすると光を失い
動かなくなると
リールは満足そうに微笑んだ
『さあ、可愛いしもべ達。存分に遊びなさい。』
リールの声は魔界に響き渡り
中級以下の魔物達は
嬉しさの余り雄叫びをあげ
上級以上の魔物達は
これから始まる宴に微笑んだ
全ての魔物が喜ぶなか
三魔神の一人レノンは
自分の城の一室にいた
そこはかつて蓮の部屋だった場所
『……蓮…。』
レノンの呟きは
誰に聞かれることなく
空気に溶けて消えていった
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