空の少女と海の少年


スタートの声と同時に
トップに躍り出たのは春だった

5kmほど離れた所にある
ゴールの木を目指して
荒れた広野を駆け抜けていく

試練だと言うから
罠や障害があると思ったが
何もないので春は笑顔になった


「こんなのなら速攻で終わらせてみんなの所に早く行けるよ!」


よし!と気合いを入れて
スピードを上げた瞬間
足元の地面が割れた


「え……?」

「春っ!」


地面の裂け目に落ちていく春の手を
掴もうと海斗が手を伸ばした


届く!


海斗がそう確信して
指先が触れた瞬間
サラが海斗の手を掴んで
春はそのまま裂け目に落ちた

その光景に奈々達も
足を止めて割れ目を見た


「嘘でしょう……?」

「楠木っ!」

「春ちゃん!?」

「春っ!なんで止めたんだよ!」

『これは個人競技だ。助けたり協力するなら失格とする。』


海斗の手を強く握る
サラの瞳は真っ直ぐだった

春のことを大切に思うサラも
春を助けたかったかもしれない

4人は春が必ず戻ることを信じ
ゴールを目指して走り出した


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