空の少女と海の少年


「え……。」

「どーしたの海斗ー?可愛いよー?」

「にゃー。」


手を中途半端に出したまま
固まった俺を見て
春は笑顔で猫を撫でた

猫は俺の方を向いていたから
春は猫が俺を睨んでたことを知らない

さっきのことが
嘘だったかのように
気持ちよさそうに目を細める猫


今のはきっと幻覚だ
今日はちょっと疲れてたから


そう自分を説得して
また猫に手を伸ばして
額を撫でてあげた


ガブッ


猫は俺の手に噛みついた
めちゃくちゃ睨みながら
しかも噛んだところが
ピリピリしてかなり痛い


「………。」

「……え…?海斗、大丈夫っ!?」


春はすぐに猫を抱き上げ
俺の手から離して
消毒して絆創膏を貼ってくれた


「ありがとう春。」

「ううんっ!どーいたしましてっ。ダメでしょ猫ちゃん!」

「にゃー……。」


春が叱ると猫は何かいいたげに目を伏せ
春に見えないように俺を睨んだ


「目つき悪いなこの猫。」

「……しゃーっ!!」

「うわっ!」


いきなり飛びかかってきた
猫に驚いて後ろに倒れると
顔を何回も引っかかれた

そのまま猫は窓から降りて
どこかに消えていった


「それがトラウマになって、それ以来猫は俺の唯一の苦手なものになったんだ。」


海斗の話を聞いたキラは
驚いたあと苦笑いした


『……そうなのか…。その時の猫って何色だった?』

「こいつみたいに金色だった。まさか……お前か?」

『違う違う!そいつは草だっ!そしてゴールだっ!壊すなっ!』


冷気を帯びた拳を上げた
海斗を必死に止めて
キラは深く溜め息をついた


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