空の少女と海の少年
──体中が痛い
左肩から落ちたから
全然言うことを聞かない
足もフラフラするし
立ってるだけで精一杯だよ
でも……
春の脳裏に仲間の笑顔が浮かぶ
一緒に試練を受けている仲間
人間界で戦っている仲間
春は呼吸を整えて
左肩を押さえる手に
力を集中させていく
『光よ、癒せ。』
淡く優しい光が
左肩から全身を包み込むと
無数にあった切り傷が
たちまち消えていく
左肩の痛みも引いて
動くようになってきた
そう春が思った時
腹部に新たな痛みが走った
『よそ見をするな。戦いの最中だ。』
大剣の柄で刺されたと気付くのに
そう時間はかからなかった
春はすぐに横に跳んで
ソウと距離をとったが
それは無駄だった
『もっと速く動ける筈だ。そんなスピードでは意味がない。』
『嵐!』
闇の塊に雷と雨を加えた
破壊力重視の一撃¨嵐¨
それをソウの腹部に
押し付けるように放った
『詰めが甘い。』
しかし嵐を放つ前に
春の手首を掴んでキツく締め上げた
「っ!」
手首に走る激痛に耐えきれず
思わず嵐を落としてしまった
そしてそのまま
地面に投げつけられた
ドンッ
春が地面に落ちたのと
嵐が爆発したのは同時だった
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