空の少女と海の少年


『──聖龍。』


由紀は呟いて鞭を振るった

純白の鞭は龍に姿を変えて
触れた魔物を砂にしていく

目を瞑って魔物の数を確認するが
倒しても増え続けるばかりで
一向に数は減らない


「蘭……急いで。」


このまま戦いを続けたら
体力やPの限界が来る

もしもそのタイミングで
上級の魔物が現れたら……


由紀はハッとして
また目を瞑り気配を探す

その気配は一点に集まって
動く様子はない


由紀は魔物の意図が分かり
舌打ちをして、鞭を振る


千里眼で見たのは上級の魔物
その数は数十匹と少ないが
自分達のPが尽きた時を狙って
一斉に攻撃するつもりらしい


「……っ!」


考え事をしていたからか
後ろに迫る魔物に気付くのが遅れ
由紀は思わず目を瞑った


ザシュッ

目を開けて見えたのは
魔物を斬った優の姿


「考え事は後にしましょう。」

「優……。」


後ろに立つ優と背中を合わせ
乱れた呼吸を整え
千里眼で視た光景を話した

優は迫る魔物を切りながら顔を歪めた


「それはヤバいですね……。」

「雑魚を相手にしても仕方ないよ。」


優と由紀は頷き合うと
上級の魔物のところへ向かった


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