空の少女と海の少年


もう少し……!


マリアが集中力を高め
完全に消滅させようとした瞬間
白く塗りつぶされた
魔界の入口にヒビが入った

ヒビは広がっていき
中から爪の長い手が出てきた


「させるかっ!」


蘭が急いで絵の具で
塗り直すが遅かった

魔界の入口は消滅できたが
厄介な魔物が現れてしまった

血のように赤い瞳と
長い爪がなければ
人間のように見える

その場にいた能力者は固まり
中級以下の魔物は跪いた


『美味そうな人間だ。今宵は最高の宴になりそうだな。』

「ま……魔神…。」

『ほう……お前子供のくせに凄い力を持っているな。』


三魔神の一人カノンの
赤い瞳に睨み付けられた蘭は
その場に立ち尽くした

動かないんじゃない
体の自由を奪われて
動かないのだ

恐怖に怯える蘭に
カノンはゆっくりと近づいていく

蘭は必死に腕を動かして
白い絵の具を筆につけた


「ふっ……う…!」

『ほう?我の呪縛を受けてもなお動けるのか。……ん?』


いきなり現れた
無数の蔓に締め付けられ
カノンは不愉快そうに前を見た

そこには蘭を守るようにして
弓を構えた玲が立っていた


『ククク……。そっくりだな。』

「蘭に手を出したらぶっ殺すから。」


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