空の少女と海の少年


傷の再生に力を集中させるが
なかなか再生が始まらない


だから光の傷は厄介だ
触れただけで力が浄化される


これ以上戦うのは無理だと
悟ったカノンは空間を切り裂いた

しかし、その空間は
すぐに消滅してしまった


「させませんわ。」

『……邪魔をするな。』


怒りに身を震わせるカノンは
即座に爪を伸ばして
マリアの心臓を貫いた


「……そん…な…。」


目を見開いてその場に倒れた
マリアを見てサリー達は
思わず後ずさりした

邪魔者がいなくなったカノンは
また空間を切り裂いて
魔界へ帰ろうとしたが
右足に激痛を感じてよろけた


振り向かなくても分かる
一度感じた痛みは忘れない


『逃げるの?』


玲の挑発的な言葉に
カノンはニヤリと笑って
玲に背中を向けたまま

弓を構える玲の心臓に
狙いを定めて爪を伸ばした


『眠れ小僧。』


終わりだ


「玲っ!」


ザシュッ


肉を貫いた感触に微笑んで
カノンはそのまま魔界へ帰った

残されたのは
呆然とするサリーと男達
息絶えたマリア

そして


「……蘭…?」


カノンの行動に気づき
玲を突き飛ばして
爪に胸を貫かれた蘭

玲は横たわる蘭の胸から
とめどなく溢れる血を見て
ようやく状況を理解した


「いやだあああああっ!!」


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