空の少女と海の少年


呆然とする海斗に聞こえるよう
独り言のように蓮は話す


「もしかしたら、あの女……校長にはもう視えていたのかもしれない。」


僕達が完全覚醒したら
人間じゃなくなる事を

だから、この旅行を企画した

最後になるかもしれない
仲間達との旅行を


蓮の言葉に海斗は唇を噛み締め
キッと蓮を睨み付けた


「人間じゃなくなっても、ユラ達みたいに人間界には来れるんだろ。」

「無理だよ。春ちゃんに海斗に僕がいるから神は人間界に来ることができるんだ。」


歴代の¨空¨と¨海¨が
人間界で修行をする18年間だけ
神は人間界に来ることができる
¨契約¨や¨融合¨の為に

だからユラ達は自由に
人間界と楽園を行き来できる


「だけど……それは¨気神¨の奈々ちゃんと¨炎神¨のりっくんだけ。僕達は神じゃない。」

「神でも、人間でもない……?じゃあ俺達はなんなんだよ!」


海斗が思わず語尾を荒げると
蓮は溜め息をついて海を見つめた


「僕と春ちゃんは空を支配する¨空王¨。海斗は海を支配する¨海王¨。そして僕達は全ての神を従える者。」

「………。」


頭が混乱する


海斗は気持ちを落ち着ける為
海を見つめ、そして固まった

満月の写る海面には
ドーリア式のような
真っ白な神殿が立っている

何度もまばたきをして
海面を見つめるが、確かにある

ゴクリと息を呑んで
その場所を指差した


「蓮、¨海の神殿¨だ……。」

「は?何言って……海斗!?」


干してあった水着を履いて
海斗は部屋を出て行った

困惑した表情の蓮は振り向いて
海斗が指差した場所を見た

そこにあるのは
海面に写る満月だけ


「¨海の神殿¨……?何もないじゃん。」


蓮は舌打ちすると部屋に戻り
水着を履いて海斗の後を追った


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