空の少女と海の少年
今日から2人は高校2年生になる
通学路に立ち並ぶ桜の木からは
ひらひらと、桜の花びらが落ちて
新しい生活の始まりを祝っている様だ
だが、2人にはそんな桜を
じっくりと見る余裕なんて無い
いつもいる筈の生徒達の姿は0
春の腕時計は9時を指していた
パタパタと走る春は時々立ち止まっては
遠く後ろを歩く海斗に向かって叫んだ
「海斗早く早く早くー!遅刻しちゃうよー!!」
「どうせ遅刻なんだから、ゆっくりでよくね?」
「よくないぃぃい!!!」
海斗は溜め息をつくと
ゆっくりと一歩、足を進めた
遠く離れていた距離は一瞬でなくなる
ずっと後ろにいた筈の海斗は
いつの間にか春の隣に立っていた
春は驚く様子もなく
すぐに走ろうとするが
あ、と声をあげて海斗を見上げる
「そいえば、昨日の魔物倒したのって海斗?」
「ん、そうだけど」
「やっぱり海斗かっ、怪我は……してないよね?」
「ああ」
「大丈夫よ、瞬殺だったから」
心配そうに見上げる春に
海斗が小さく笑いかけると
後ろから凛とした声が聞こえた
_