空の少女と海の少年

◇堕天使の唄



──コプリ


桜色の唇から出た小さな泡が
少し上がって、弾けて消えた

漆黒に染まる液体の中で
淡い空色の光を纏う春の体には
大樹の根が巻き付いていて
春から養分を吸い取ろうとしていた


しかし、いつまでも経っても大樹は
春から養分を吸い取る事は出来ない

空色の光が春を守っていたから


──はる

──春、起きろ


頭に響く声にピクリと反応して
春はゆっくりと目を開いた


……真っ暗だ…。
ここはどこなんだろう……?

海斗……どこ…?


──春、大丈夫か?


また聞こえた声に春は小さく頷いた


「大丈夫だよ。クウ、ありがとー。後は春がやるから。」

──そうしろ。俺様も疲れた。

「ごめんねー…。」

──気にするな。


少し疲れたようなクウの声に
春はシュンと目を伏せた

この暗く強い闇の中でずっと光を出して
大樹から春を守っていたのだから
かなりの力を消費したのだろう


春は集中力を高めると
同じように空色の光を体に纏う

その時だった
クウ以外の声が聞こえたのは


『あなたが空のお姫様?』


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