空の少女と海の少年


『この湖の中にはね、何でも願いを叶えてくれる種があるんだよ。それがあれば、お姉ちゃんはもう苦しまなくていいんだよ。』


私は湖の中を覗き込んだ

よく目を凝らしてみると
湖の底に銀色の箱が置いてある

多分、あの中に入ってるんだろうな


『苦しまなくていい……。』


呟くように言うと
少年が私の手を強く握った


『そうだよ。お姉ちゃんも……大切な友達も。』


その言葉にハッとして
振り返って少年を見たけど
少年は下を向いていて
表情は分からなかった

だけど少年はすぐに笑顔を見せた


『僕も種を見てみたいの。お願い、取ってきて?』

『でも……。』

『僕泳げないから……。それに僕もお願い事があるんだっ!』

『君の願い事って?』


少し気になって聞くと
少年は口に指を当てて
取ってくれたら教えてあげる。と笑った


私はどうしようかと悩んだけど
子犬のように見つめる少年に負けて
短剣やら上着を置いて湖に入った


あと、自分の願いにも負けて


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