空の少女と海の少年


何か変だ

この少年は魔物じゃない

だけどなんなの?

体が動かない、冷たい

凄まじい殺気と闇の力


『君は何者なの……?』

『へえ、まだ喋れるんだ。やっぱ普通の天使じゃないんだね……。殺そうと思ったけど……やめてあげる。』


金色の瞳が怪しく光って
少年の手に握られた種は
どんどん黒く染まっていく

ガタガタと震える私の前に
一瞬で移動した少年は宙に浮き
そのまま私の耳元で囁いた


『お姉ちゃんの体、貰うよ。』


その言葉を聞いた途端に
体の力が抜けて目の前が真っ暗になった



──リールは話し終わると
疲れたように息をついた


『で、気付いたら体は奪われててここにいたの。だけど、私の体が見た光景も、思ってる事も全部分かるの……。だからお姫様の事も知ってたんだ。』

「………そっか。じゃあ春が会ってたリールはその少年なんだね。」

『違うよ。』

「えええっ!?」


春が叫ぶとリールは首を傾げて
真剣な表情で宙を睨んだ


『あの少年は私の中にいない。私の中にいるのは大樹だよ。』

「じゃあ少年は……?」

『なんとなくだけど、どこかで大樹を操ってる。』


そして笑ってる
そんな気がするの


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