空の少女と海の少年


春はすぐに穴から出ると
振り返ってリールに手を伸ばした


「一緒に出よう!」

『無理だよ。今の私は体がないから……外に出たら消えちゃうの。私の事は気にしないで。だからお願い、早く大樹を浄化して。』

「……でもっ……うん。分かった。」


春は名残惜しそうに手を引くと
リールは優しい笑みを浮かべた


そして、穴は閉じた


リールはふう。と息をつくと
闇の中でバサリと羽根を広げ
空間から鎌を取り出した


『私も……頑張らなくちゃ。死ぬわけにはいかなくなったしね。』


人間界にいた白銀の髪の少女

アキによく似た彼女の正体が知りたい


リールは唇をぎゅっと結ぶと
黄金の瞳を輝かせて鎌を大きく振った


『何百年もの間、力を蓄えていたのは肉体だけじゃないんだよっ!!』


巻き起こる凄まじい風と共に
金色の光がリールを中心に広がった


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