空の少女と海の少年


──春と海斗の周りを回る光の球が
十分に空と海の力を吸い取った

それを肌で感じ取ると
2人はゆっくりと口を開いた


『収束・幹』


光の球は2人の元を離れて
今度は大樹の周りを回る

嫌がるように幹は震えて
ざわざわと葉の音が激しくなる


やがて光の球は虹色の縄になって
幹を覆い隠すように巻き付いていく


『膨張・蕾』


力がとめどなく流れていく感覚に
春と海斗の額にも汗が浮かび
呼吸が荒くなっていく


幹を覆った縄はまた1つになり
シャボン玉のように膨らんで
大樹全体を飲み込んでいく


葉の擦れる音が更に大きくなるが
急にピタリと止んで辺りを静寂が支配する


大樹は完全に虹色の球体に飲み込まれた


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